解雇有効の判例(1)|弁護士 面川 典子

労働者の解雇が有効とされるには、労働者が違反を繰り返し、会社の再三の注意・指導にも関わらず、改善の見込みがないと判断される客観的事実があることが必要とされます。

事務機器販売会社に再就職した50代の男性従業員。勤務成績不良で、再三の注意・指導にも従わず改善の見込みがないと解雇した事案。(N社事件 H18.3.14東京地裁)裁判所は、業務の遂行に必要な能力を著しく欠くと認められ本件解雇は、客観的に合理的な理由が存在し、社会通念上相当であったと判断しました。

経緯事実等
男性従業員は、物流業務課に配属されたが、10か月以上経過してもなお、商品納入にあたって欠品を生じさせたり書類の提出の遅延などを繰り返 し、また、社内の他部門関係者や顧客からその業務対応の不適切さ、不誠実さ、協調性を欠く言動について苦情が寄せられることが多かった。その都度、マネージャーは、男性従業員に対し、状況報告を求め、また、指導・注意を行ったが、男性従業員は弁解をして指導・注意に従 わず、反省の様子が見られなかった。そこで、会社は、男性従業員を別の部へ異動させることとしたが、そこでもトラブルを生じさせ、顧客から苦情が寄せられたため、上司は再三、注意・指導を繰り返したが態度は改善しなかった。そのため会社は男性従業員を普通解雇とした。
 
裁判所の判断
 裁判所は、男性従業員の勤務態度をことさら問題視されたことが上司との相性や上司の男性従業員に対する嫌悪の情に 起因するとはいえず、男性従業員は、上司からの再三の指導・注意にもかかわらず、自己の勤務態度を反省して、改善することがなかったと判断 せざるを得ないから、男性従業員は、業務の遂行に必要な能力を著しく欠くと認められ本件解雇は、客観的に合理的な理由が存在し、社会通念上相当であったというほかない。

(N社事件 H18.3.14東京地裁)

 

2014年1月23日 | カテゴリー : 労働 | 投稿者 : 面川典子(弁護士)