労働問題関連情報
関連情報(弁護士 面川典子wrote)
改正労働者派遣法の概要|弁護士 面川典子
改正労働者派遣法が、本年(平成27年)9月30日に施行されました。
現在の派遣契約には、旧派遣法が適用されることや、特定派遣事業(届性)の許可制への移行には経過措置が3年の経過措置があることにより、混乱は生じていないようです。現在の派遣契約については、いずれ改正労働者派遣法が適用になりますので、派遣社員、派遣会社、派遣先会社とも改正について確認が必要になります。特に、派遣会社は、法に従わなかったときは派遣許可の取り消しも含めて強い指導が行われますので、十分に注意が必要です。
派遣事業が、全て許可制になります。許可を得るために、基準資産額、現預金残高、事業所の面積について、課された条件を満たす必要があります。条件を満たせずに事業の継続を断念する事業者も出てくることが予想されます。特定労働者派遣会社から派遣されている労働者は、会社の意向を早めに確認をしておいた方が良いでしょう。
厚生労働省の調べによれば、平成25年現在、派遣事業者は次のとおりです。
事業所数 | 稼働事業所数 | |
一般労働者派遣事業(許可制) | 17,936か所 | 13,485か所 |
特定労働者派遣事業(届出制) | 56,686か所 | 27,495か所 |
〔改正の概要〕
1)特定労働者派遣事業(届出制)と、一般労働者派遣事業の区別を廃止して、全ての労働者派遣事業が許可制になりました。
2)派遣期間終了時の派遣労働者の雇用継続をするための措置が派遣元に課されました。これへ派遣元が違反したときに許可の取り消しもあります。(3年経過時は義務、1年以上3年未満は努力義務) 3)派遣労働者のキャリアアップのため、派遣労働者に対する計画的な教育訓練や、希望者へのキャリア・コンサルティングを派遣元に義務付け 4)今で専門26業種には派遣期間の制限はなく、その他の業務(自由化業務)の派遣期間は3年迄という制限がありましたが、専門26業務と自由化業務の区分が 廃止され、次の期間制限が設けられました。 ・専門26業務の廃止。 ・個人単位の派遣期間は最長3年:派遣先同一組織単位(課)における同一派遣労働者の継続的な受入は3年が上限。 ・事業所単位の受け入れ可能期間は原則3年:派遣先の同一事業所における派遣労働者の受入は3 年が上限。3年を越えて受入るときは、派遣先企業での過半数労働組合での意見聴取が必要。 5)派遣元、派遣先双方に於いて、派遣労働者の均衡待遇措置の強化 〇派遣元:雇用する派遣労働者から求めがあったときは均衡を考慮した待遇確保のために配慮した内容を、当該派遣労働者に説明する。義務 違反に対しては許可の取り消しを含め、厳しい指導の対象。 〇派遣先:業務に密接に関連した教育、福利厚生施設利用(給食施設、休憩室、更衣室)について、従業員と派遣労働者均等に扱う配慮義務。 |
従業員をいきなり解雇したらどうなるか?|弁護士 面川典子
従業員を、解雇したことにより係争が起こり、当事者間での話し合いで解決できなかったとき、どのような流れで解決がはかられていくのかの典型的で事例をご紹介致します。実際には、個々の状況を詳細に見て行く必要がありますので、手続きの流れの参考としてご覧ください。
今回の事例は、遅刻の常習者で、欠勤も多く、無断欠勤もあるBさんを、就業規則に従い、解雇予告手当てを支払い解雇したというものですが、これが事実があっても直ちに認められるというものではなく、非常に悪質だったり、何度繰り返しても反省が無い、などの事情が必要です。 会社の主張が認められるためのハードルは、普通の人が考えるであろう基準より高いものであると言うことです。これについては、3月11日の私のブログをご参照ください。リンク 解雇ー解雇権の濫用とは
同じく今回の事例では、Bさんは労働局にあっせんを申立ています。一般に、労働局のあっせんの解決金額は訴訟等に比べ低いと言われていますので、この段階で和解しておけば金銭的時間的な負担が少ないことも多いのも事実です。この以前の段階で労働問題に詳しい弁護士に相談して、係争の見通しをたてておくことをお勧め致します。
——————————————————————————————————————————————————————-会社側が、「勤務態度不良者」をいきなり解雇したらどうなるか?
・費用もかからず手軽に利用できる手段
・解決金額は訴訟等に比べ低いと言われている
管轄の地方裁判所から労働審判の書類が届く
約30日後に第1回期日~第3回期日
「地位確認」の申立であったが、今は会社に戻る意思はないと述べたことから、
会社も復職を望まず、1年分の解決金を支払うことで合意した。 A社は、240万円を支払う(20万/月給×12ヶ月)
※審判となった場合で2週間以内に、異議がでれば訴訟に移行します。労働審判と訴訟は別の手続き。連動していないので、改めて主張立証が必要になります。
解雇有効の判例(1)|弁護士 面川典子
事務機器販売会社に再就職した50代の男性従業員。
勤務成績不良で、再三の注意・指導にも従わず改善の見込みがないと解雇した事案 ⇒解雇有効
〔判断のポイント〕
解雇が濫用でないとされるには、労働者が違反を繰り返し、会社の再三の注意・指導にも関わらず、改善の見込みがないことが必要です。
〔経緯事実等〕 原告は、物流業務課に配属されたが、10か月以上経過してもなお、商品納入にあたって欠品を生じさせたり書類の提出の遅延などを繰り返 し、また、被告社内の他部門関係者や顧客からその業務対応の不適切さ、不誠実さ、協調性を欠く言動について苦情が寄せられることが多かった。その都度、マネージャーは、原告に対し、状況報告を求め、また、指導・注意を行ったが、原告は弁解をして指導・注意に従 わず、反省の様子が見られなかった。
そこで、被告は、原告を別の部へ異動させることとしたが、そこでもトラブルを生じさせ、顧客から苦情が寄せられたため、上司は再三、注意・指導を繰り返したが原告の態度は改善しなかった。そのため会社は原告を普通解雇とした。
〔裁判所の判断〕
裁判所は、原告の勤務態度をことさら問題視されたことが上司との相性や上司の原告に対する嫌悪の情に 起因するとはいえず、原告は、上司からの再三の指導・注意にもかかわらず、自己の勤務態度を反省して、改善することがなかったと判断 せざるを得ないから、原告は、業務の遂行に必要な能力を著しく欠くと認められ本件解雇は、客観的に合理的な理由が存在し、社会通念上相当であったというほかない。
(日本ストレージ・テクノロジー事件 東京地判H18.3.14 労経速1934号)
解雇無効の判例(1)|弁護士 面川典子
調査研究を行う法人で事務をおこなっていた54歳の男性従業員 17年勤務。
就業規則違反を繰り返し、勤務成績もはなはだ不良のため就業に適しないとして解雇した事案 ⇒解雇無効(信義則に反し権利の濫用であり無効とした)
〔判断のポイント〕
解雇が濫用でないとされるには、労働義務違反の程度が重大で、雇用継続が期待し難い程度に達していることが必要となり、さらに従業員間の平等な取扱いも必要となります。
経緯と、裁判所の判断の概要です。
〔経緯事実等〕
文書作成等の能力に欠け、特に勤務態度、積極性、企画性、協調性等において問題が大きかった。
上司と協力して仕事をしようとせず、上司の机との間にわざわざロッカーを入れて壁にしたり、さまざまな嫌がらせや反発を示し、注意を与えて上司に対しては逆に喰ってか
かった。
膨大な遅刻(15分未満)が続く 半年間に100日という年もあった。
勤務ぶりはアルバイト的で積極性に欠け、上司より注意されても一向に改善されなかった。
書面の発送を怠り、始末書を提出したこともあった。
朝出社してタイムカードを押した後、外回りに出ると報告して外出すると全く仕事先によらず帰宅した。
自己のタイムカードを多数回に渡り改ざんした。
〔裁判所の判断〕
15分以内の遅刻ではあるが、回数の多さやその他の事情からすれば、勤務成績、勤務態度は非常に悪く、解雇事由になりうる。
しかし、この法人では、この従業員以外にも同様の回数遅刻を重ねている職員がいたが、解雇されておらず、事務局長にまでなっているものもいる。
さらにこの従業員に対しては、退職を求めたが断られた。すると、昇給を止めて賞与額を大幅に減額し、後の就業規則に定年退職の条項を追加して退職を通告したりした。
しかし、他の職員については定年を無視して雇用を継続するなどしていたことから、本件解雇が信義則に反し権利の濫用であり無効とした。
(神田法人会事件H8.8.20東京地裁)
解雇ー解雇権の濫用とは|弁護士 面川典子
勤務態度不良者をいきなり解雇したらどうなるか?勤務態度不良を理由に解雇されたらどうするか?
勤務態度が良くない特定の従業員を解雇したい。解雇した従業員から不当解雇だと苦情が来ているという経営者の方からの相談、労働者の方からは、「解雇されたが納得がいかない」という解雇に関する相談が増えてきています。実際の判断については、個々の状況を詳細にみないと明確なことはお伝えができませんの、「解雇に関する」一般的なことを述べて行きます。無料の労働相談(初回30分)を行っていますので、電話予約の上、ご利用ください。
日本では、解雇は厳しく制限されたいます。労働契約法では、解雇権の濫用は無効としています。〔労働契約法第16条 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。〕
○解雇が濫用でないとされるには:
- 労働義務違反の程度が重大で、雇用継続が期待し難い程度に達していることが必要となり、さらに従業員間の平等な取扱いも必要となります。
- 労働者が違反を繰り返し、会社の再三の注意・指導にも関わらず、改善の見込みがないことが必要となります。
○会社の業績が悪いので、解雇予告手当を支払って従業員を解雇したが従業員が納得せず、争いになるケースも多くあります。整理解雇が適正かどうかについては、判例で要件が示されています。原則次の4要件を満たす必要があります。
- 経営上の必要性がある:整理解雇をしなければ倒産してしまうほど追い込まれているのほどの経営上の必要性が客観的に認められること
- 解雇回避の努力をした:配置転換、出向転属、希望退職の募集、賃金の引下げその他整理解雇を回避するために会社が最大限の努力を尽くしたこと
- 労使間での協議が行われた:整理解雇の必要性やその時期、方法、規模、人選の基準などについて、労働者側と十分に協議し、納得を得るための努力を尽くしているこ
- 人選の合理性がある:勤続年数や年齢など解雇の対象者を選定する基準が合理的で、かつ、基準に沿った運用が行われていること
○「合理的な理由の無い、社会通念上妥当と判断されない解雇」は無効となり、解雇そのものが否定され、労働契約は依然として存在することになります。その為、この間の賃金の支払いの必要性も生じます。
○実際に解雇について、争いが生じたとき、どのように進むのか。「勤務不良の従業員をきなり解雇したらどうなるのか」について、手続きの流れの事例をまとめてみました。実際については、いろいろなケースがありますので、あくまでの一つの事例として見てください。
パワハラの判例(2)|弁護士 面川典子
今回は、福井県での判例をご紹介します。概要は、下記のとおりです。裁判では、男性がメモに残した直属の上司の暴言について「仕事上のミスに対する叱責(しっせき)の域を超え、男性の人格を否定、威迫するもの」と認定しました。今回は、会社だけでなく直属の上司も支払を命じられており、個人も責任を負う判決となりました。
報道によれば会社は控訴しているようです。
〔経緯事実等〕
高校卒業後に入社した会社で、特定の上司により連日のように、「学ぶ気持ちはあるのか、いつまで新人気分」、「毎日同じことを言う身にもなれ」、「待っていた時間が無駄になった」「死んでしまえばいい」、「辞めればいい」「今日使った無駄な時間を返してくれ」 といった発言をされ、1年も満たない内に自殺したケースです。男性の父親が会社と当時の上司2人に対し、慰謝料など約1億1100万円の損害賠償を求め、会社と上司2人に訴訟を提起しました。
〔裁判所の判断〕
裁判所は、仕事上のミスに対する叱責の域を超えて、人格を否定し威迫するもので、経験豊かな上司から入社後1年にも満たない社員に対してなされたことを考えると典型的なパワーハラスメントといわざるを得ず、不法行為に当たるとしました。
そして、高卒の新入社員であり、作業をするに当たっての緊張感や上司からの指導を受けた際の圧迫感はとりわけ大きく、上司の言動から受ける心理的負荷は極めて強度であり、上司の言動は精神障害を発症させるに足りるものであったとして、パワハラと自殺との因果関係を認め、逸失利益や慰謝料など合計金7261万2557円の支払いを会社と上司に命じました。(福井地方裁判所平成26.11.28判決)
パワハラの判例(1)|弁護士 面川 典子
6月の記事「個別労働紛争解決制度施行状況(平成25年度)でも記載しましたが、民事上の個別労働紛争の相談内容では、「いじめ・嫌がらせ」が2年連続で最多となっています。これは、実に相談件数の約20%になります。その中では、うつ病などの精神疾患を発症し、労災補償を受ける人も増えています。バブル崩壊以降、会社が共同的であった所謂「日本型雇用形態」から、成果主義的な雇用形態への変化が背景にあると考えられます。パワハラによる被害を受ける労働者はもとより、企業も蒙る損失も相当大きなものとなります。
今回は、F生命米子営業所での判例をご紹介します。概要は、下記のとおりです。裁判では、一般的には「雇用をおびやかす言動、侮辱、暴言、執拗な非難、人前での叱責、威圧的言動、無視、必要な情報を与えないなどの有無が判断のポイントになっているようです。
〔パワハラ事案の概要〕
生命保険会社において営業職として勤務し、マネージャーであった者(原告)が、上司の逆恨みによる嫌がらせを受けたため、うつ病に罹患し、離職に追いやられたとして上司と会社に対し、民法709条、715条に基づいて損害賠償請求をした事案。 ⇒ 慰謝料 300万円の支払い |
〔経緯事実等〕
F生命保険会社の米子営業所で営業職として勤務してきて、昭和62年に一つの班のマネージャーとなった。原告の班は営業成績が最下位であり、原告自身の成績も芳しくなかったため、原告は上司からたびたび叱責された。なお、ある顧客の契約について告知義務違反があるとのトラブルが生じ、その顧客から苦情が出たとのトラブルがあったが、後に解決している。 その後、原告はストレス性うつ病と診断され、休職をしたが、期間満了で自動退職となった。そのため原告から、会社及び上司に対し上司による違法な行為について慰謝料とともに、治療費や入院費等、逸失利益の請求がなされた。 |
〔裁判所の判断〕
裁判所は、他の社員のいる中で、確認の必要が乏しいにもかかわらず、告知義務違反の教唆の有無という生命保険会社の営業職員にとって不名誉な事柄を問いただしたこと、長年マネージャーを務めてきた原告に対し、「マネージャーが務まると思っているのか」「マネージャーをいつ降りてもらっても構わない」等いかにもマナージャー失格であるかのような言葉を使って叱責したことは違法であるとして、慰謝料300万円の支払いを命じた。 但し、上司らの違法な行為との相当因果関係はストレス性うつ病の発症までで、重篤化や入院、退職との間の相当因果関係は否定した。(F生命保険事件 鳥取地裁米子支部判決H21.10.21労判996号) |
個別労働紛争解決制度施行状況(平成25年度)| 弁護士 面川典子
厚生労働省は、「平成25年度個別労働紛争解決制度」の施行状況を公表しました。
有効求人倍率等から見るとおり、雇用状況は改善してきていることが解雇の相談の減少につながってきていると思われます。一方で、人手不足に悩む職場も増えており、過重な業務がいじめ・嫌がらせの要因になるケースも増えているように思います。当面この傾向は続くものと予想します。
平成25年度は、前年度に比べて、総合労働相談、助言・指導、あっせんのいずれも件数が減少していますが、民事上の個別労働紛争の相談内容では「いじめ・嫌がらせ」が59,197件と、2年連続で最多となっています。
解雇は、21年度の、69,121件をピークに大幅に減少しています。
【総合労働相談の内訳】
・いじめ、嫌がらせ 59,197件(前年比+14.6%)
・解雇 43,956件(前年比▲14.7%)
・自己都合退職 33,049件(前年比+11.0%)
・労働条件引下げ 30,067件(前年比+11.5%)
【あっせん申請件数】
・解雇 1,614件(前年比▲15.2%)
・いじめ、嫌がらせ 1,474件(前年比+13.6%)
・雇止め 548件(前年比+6.4%)
・労働条件引下げ 546件(前年比+6.0%)
(厚生労働省:平成25年個別労働紛争解決制度施行状況)
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ー個別労働紛争解決制度ー
個々の労働者と事業主との間の労働条件や職場環境などをめぐるトラブルの未然防止や紛争の実情に即した迅速かつ適正な解決を図る制度。
内容は労働条件の引き下げ、解雇、いじめ、嫌がらせ、退職勧奨などが多い。
根拠法:「個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律」
・総合労働相談
・助言、指導(労働局長による)
・あっせん(紛争調整員会による)
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