パワハラの判例(2)|弁護士 面川典子

今回は、福井県での判例をご紹介します。概要は、下記のとおりです。裁判では、男性がメモに残した直属の上司の暴言について「仕事上のミスに対する叱責(しっせき)の域を超え、男性の人格を否定、威迫するもの」と認定しました。今回は、会社だけでなく直属の上司も支払を命じられており、個人も責任を負う判決となりました。

報道によれば会社は控訴しているようです。

〔経緯事実等〕

高校卒業後に入社した会社で、特定の上司により連日のように、「学ぶ気持ちはあるのか、いつまで新人気分」、「毎日同じことを言う身にもなれ」、「待っていた時間が無駄になった」「死んでしまえばいい」、「辞めればいい」「今日使った無駄な時間を返してくれ」 といった発言をされ、1年も満たない内に自殺したケースです。男性の父親が会社と当時の上司2人に対し、慰謝料など約1億1100万円の損害賠償を求め、会社と上司2人に訴訟を提起しました。

〔裁判所の判断〕

裁判所は、仕事上のミスに対する叱責の域を超えて、人格を否定し威迫するもので、経験豊かな上司から入社後1年にも満たない社員に対してなされたことを考えると典型的なパワーハラスメントといわざるを得ず、不法行為に当たるとしました。
そして、高卒の新入社員であり、作業をするに当たっての緊張感や上司からの指導を受けた際の圧迫感はとりわけ大きく、上司の言動から受ける心理的負荷は極めて強度であり、上司の言動は精神障害を発症させるに足りるものであったとして、パワハラと自殺との因果関係を認め、逸失利益や慰謝料など合計金7261万2557円の支払いを会社と上司に命じました。(福井地方裁判所平成26.11.28判決)

2014年12月15日 | カテゴリー : パワハラ | 投稿者 : 面川典子(弁護士)